引越し時の敷金返還

敷金はいつ返還される?敷金返還請求権

賃貸契約を結ぶ際、礼金や敷金を支払うのが一般的となっていますが、敷金は原則として退去時に返還されるものです。このページでは、退去後の平均的な敷金返還時期や、なかなか返還してもらえない時の対処法を説明しています。また、借主が貸主に対して敷金の返還を求めることができる権利(敷金返還請求権)とその期間についても併せてご紹介します。

敷金返還請求権

敷金が返還されるのは物件の原状回復が完了してから

敷金は借主が部屋を完全に明け渡し、かつその部屋の原状回復が完了してから返還されるのが一般的です。原状回復は、貸主が行います。

借主の原状回復の負担があるため、実際に原状回復を行ってみなければ原状回復費がどれぐらいか分かりません。借主負担の原状回復費は敷金から差し引かれるので、敷金の精算ができるのは、原状回復が終わってからということになります。

敷金は退去後30~45日程度で返還されるのが一般的

敷金には、厳密に「退去後何日までに返却されなければならない」という規定がありません。とはいえ、だいたい30日~45日程度で返還されるケースが多いようです。中には、敷金の返還期限が明確に決められている賃貸契約もあるので、気になる人はまず契約書を確認してみてください。

退去後、無事に敷金が返還されるか心配な人も多いと思いますが、もし、1ヶ月程度経過して、何の連絡もないといった場合には、敷金精算について早急に確認を取った方がよいでしょう。原状回復や敷金精算がどこまで進んでいるのかが分かれば安心ですし、万が一、全く進められていないという場合には、早急に原状回復や敷金精算を行うよう催促することができます。

ただし、敷金の返還時期は物件の原状回復に左右されますので、キレイに使っていれば比較的早く終わりますが、逆に汚してしまった場合にはその分時間がかかります。実際にいつ返還されるかは、物件の状況によって大きく異なる可能性があるということも考慮した上で交渉するようにしましょう。

いつまで待っても敷金が返ってこない時の対処法

敷金を返還する意思がないのか、なかなか敷金精算を進めてくれない貸主もいます。何度連絡しても返答があいまいだったり、先延ばしにされたりするような場合には要注意です。そのまま数ヶ月、数年経っても一向に敷金が返還されない、といったトラブルに発展する可能性があります。このようなケースは、原状回復に関連した敷金返還額のトラブルに次いで多いと言われ、早めの対応が必要です。

まずは内容証明郵便で敷金返還請求書を送る

内容証明郵便で敷金返還請求書を送る

敷金を返還するような態度を見せておきながら、いつまで経っても返してくれない場合、成り行きに任せていると、たいてい敷金は戻ってきません。電話で催促しても返還されない場合には、内容証明郵便を使って正式に敷金返還の請求をしましょう。

内容証明郵便とは、「いつ」「誰が」「誰に」「どんな内容の」手紙を送ったかを記録してくれる郵便のことです。この郵便を使って敷金返還請求書を送ると、貸主に請求書が届けられたという証拠が残るため、そう簡単に無視することができなくなります。

内容証明郵便で敷金を返してもらうコツとしては、必ず返還期限を明記することと、最後に「期限までに返還がされない場合には、訴訟を考えている」旨を明記することです。請求書に書かれた期限までに敷金が返還さなければ、裁判で争うことになるかもしれないということで、多くの貸主はこの段階ですぐに返還してくれます。

ちなみに、内容証明の差出方法は郵便局の内容証明のページをご覧ください。

https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/

内容証明郵便でも効果がなかったら?

内容証明郵便でも効果が無かった場合にも、少額訴訟で取り戻すという選択肢が残されています。自分で行えば1万円程度で訴訟を起こすことができ、弁護士も必要ありません。また、先に送っておいた内容証明郵便を証拠として提出することができます。

ただし、少額訴訟は最終手段です。借主に全くリスクが無いという訳ではありませんので、慎重な判断とそれ相応の覚悟が必要であることは忘れないでください。

借主は敷金返還請求権が与えられる

敷金返還請求権とは、借主には、必ず「敷金返還を求めることができる権利」というものが一定期間与えられます。これが敷金返還請求権です。この権利が発生するのは、物件を完全に明け渡した日の翌日からとなります。入居中は貸主に管理する権限があるため、借主の都合で敷金を返してもらう、滞納している家賃を敷金で相殺してもらうといったことはできません。

借主の都合で敷金を返してもらうことはできない

たとえ退去が決まっていたとしても、明け渡す前の敷金返還はできません。中には「敷金を返してもらえなければ退去しない」という借主もいますが、その主張は認められないので注意しましょう。

退去前に敷金返還はできない

物件の明け渡しが完了した翌日からは敷金返還請求権が発生しますので、敷金の返還を請求することが可能です。ただし、原状回復が完了してからの敷金返還は正当な理由となるため、実際には原状回復が完了した後に敷金精算を行うという流れになります。

敷金返還請求権っていつまで有効?

敷金返還請求権は、物件の明け渡しが完了してから5年間です。ただし、時効間際に内容証明郵便などによって敷金返還請求を行うと、時効の進行を一時的に止めることができます。

敷金返還請求権の有効期限

上の図のように、敷金返還請求権は何もしなければ5年で時効です。しかし、請求権が有効な期間に敷金返還の催告を行うと、催告日から6ヶ月間は時効が成立しなくなります。この期間中に裁判上などの手続き(訴訟、支払督促、仮差押えなど)が行われない場合は、催告日から6ヶ月後、時効が成立します。

※厳密には時効を過ぎた後でも、敷金の請求自体は可能です。しかし、貸主にとってそのお金は既に払わなくていいものですし、仮に貸主が時効を知らなかったとしても、敷金の回収はかなり難しいと言われています。

貸主や借主が途中で変わった場合、敷金返還の請求先や請求権はどうなる?

借主が入居中に、物件のオーナー(貸主)が変わることが稀にあります。これを、一般的にオーナーチェンジといいます。また、借主が自分の変わりに友人に住んでもらうなど、賃貸契約中に借主が貸主から許可をもらって第三者に賃借権を譲り、借主が変わるというケースもあります。このような場合、誰に敷金返還請求権があり、誰に対して敷金返還を請求すればよいのかを説明します。

貸主が変更になった場合

新しいオーナー(貸主)に敷金返還を請求できます。オーナーチェンジの場合、借主に敷金を返還する義務も同時に継承されるためです。借主は、オーナーが誰であろうと、退去時のオーナーから敷金を返還してもらうことになります。

貸主が変更になった場合の敷金返還の請求先や請求権

借主が変更になった場合

借主の変更では、原則として敷金返還請求権の継承はありません。つまり、入居者が変わっても、敷金返還請求権は旧入居者にあるということです。ただし、以下の場合には、例外として継承が認められることがあります。

※新入居者に、敷金返還請求権を譲渡することを旧借主が希望している
※新入居者の債務不履行の担保にすることを借主が希望し、貸主がそれを認めている など

借主が変更になった場合の敷金返還の請求先や請求権

敷金返還請求権の注意点

敷金返還請求権は、借主を守るためにある権利のひとつですが、これはあくまでも敷金を返還するよう求めることができる権利です。実際に返してもらえるかどうかについては、また別の問題です。また、敷金返還権が5年あるといえども、なるべく早い段階で敷金精算が終えられるよう意識する必要があります。

敷金返還請求権がある=敷金を返還してもらえる、ではない

いくら敷金返還請求権があるといっても、必ず敷金が手元に戻ってくるとは限りません。貸主側に返還しなくてもよい正当な理由がある場合はもちろんですが、敷金を取り戻すために必要な手間や時間、精神的、金銭的な負担を考えると割に合わず、あきらめざるを得ないというケースも稀にあるのが現状です。

たとえば、少額訴訟を起こし、勝訴したとします。しかし、勝訴したから必ず返還されるというものではなく、実際に返してくれるかは貸主次第。その後も返還されないようであれば、今度は強制的に返還させるための手続きが別途必要です。訴訟を起こして勝てば、必ず返ってくるというものではないということも、頭の片隅に入れておく必要があります。

請求が遅くなると余計に取り戻しにくくなる

敷金返還請求権は5年ありますが、請求が遅くなればなるほど、簡単には取り戻せなくなる傾向があります。数ヶ月、数年前の敷金精算を正確に行うことが難しいという理由もありますが、「なぜ今さら」と貸主が返還を渋るというのも理由のひとつです。

貸主と敷金返還についての確認や相談を始めるのに最も適したタイミングは、退去する旨を貸主に伝える時。ここで、借主の原状回復費用負担の範囲や敷金返還時期に触れた話をしておくとよいでしょう。