引越し時の敷金返還

敷金返還の5つのトラブル対策

おもちゃの家とお金

国民生活センターによると、消費生活センターに寄せられる敷金および原状回復トラブルの相談件数は、ここ数年で若干減少傾向にあるものの、その数は年間約15,000件もあるそうです。実際に起こっているトラブルは、それ以上に及ぶと考えられます。

敷金返還に関するトラブルは、非常に多く発生しており、引越をする場合は他人事ではありません。ここでは、このような敷金に関するトラブルを防ぐための5つの対策をご紹介します。

1、入居前に住居の傷等を確認して写真を撮っておく

入居前に写真を撮っておく

貸主は、入居前の部屋の状態をすべて把握しているわけではありません。そのため、入居前からあった傷や汚れに対する修繕費や清掃費を退去時に請求され、トラブルになるという事例が多く報告されています。このようなことが起こらないようにする為に、最も有効なのが、入居前(または入居後すぐ)の写真撮影です。

入居時には必ず部屋を隅々までチェックし、身に覚えのない傷や汚れを見つけたらすべて写真に残しておきましょう。特に気になる欠陥が見あたらなかった場合にも、念のため部屋全体の写真を撮影しておくことをおすすめします。

また、写真を撮るだけでなく、見つけた傷や汚れについて貸主に報告し、同じ写真を貸主側でも保管してもらうようお願いしましょう。報告が遅くなると借主がつけたものではないという証明が難しくなりますので、入居後早めに実行することが重要となります。

写真を撮影する際の注意点

入居時、傷や汚れを発見し、写真を撮影する際は、以下の3つの点に注意して撮影して下さい。

  • 1、日付入りで撮影し、契約書と一緒に保管しておく
  • 2、デジタルカメラよりもフィルムカメラで撮影した方が証拠として有利
  • 3、部屋どこの部分の傷や汚れか分かるようにしておく

証拠として残す写真ですので、日付を表示する設定で撮影しましょう。写真を撮影したら、プリントして契約書と一緒に保管すると安心です。また、元のデータ(フィルム式の場合はネガ)を保存しておくことも忘れないで下さい。

また、証拠としての効力が高いのは、フィルム式のカメラで撮影された写真だと言われています。フィルム式のカメラに比べ、デジタルカメラの日付は改ざんが容易であることがその理由です。そのため、デジタルカメラを使う場合、写真を撮影したらすぐに貸主と共有するということが重要になります。

最後に、撮影した傷や汚れが、どのあたりのものか、間取り図等にメモした上で、写真と一緒に保管しておくとことをお勧めします。

2、借主負担と貸主負担の原状回復範囲を予め知っておく

入居前の部屋

敷金返還のトラブルの中でも、原状回復費用の負担範囲を巡ってのトラブルは非常に多いようです。トラブルを回避するためにも、通常どの範囲が借主負担として請求されるものなのか、予め知っておくことが重要です。

原状回復の負担範囲については、明確な法律等はありませんが、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(飛び先はPDF)」や、東京都の「賃貸紛争防止条例 (東京ルール)(飛び先はPDF)」の2つのガイドラインが参考にされることが多いようです。
上記のガイドラインを参考に、原状回復費用の負担はついて、以下にてご紹介します。

故意・過失による損耗は借主負担

故意あるいは過失による傷や汚れ、善管注意義務違反※、通常の使用を超えた使い方をしたため発生した損耗、故障などに対しては、借主負担となります。つまり、借主が注意すればつかない汚れや傷などについては、借主が修繕費や清掃費を負担するべきであるということです。

<故意・過失による損耗の例>

  • わざと蹴飛ばして傷をつけた(故意)
  • カーペットに飲みものをこぼしてシミをつけた(過失)
  • 掃除を怠ったためにカビが生えた(善管注意義務違反)
  • 壁にビスを使って棚を設置したところ、壁の下地ボードまで穴があいた(通常の使用を超えた使い方)

※善管注意義務 借主として一般的に求められる程度の注意(日頃の清掃を怠らない、不具合を放置しないなど)を払って部屋を使う義務のことです。

通常損耗や経年劣化は貸主負担

上記の故意や過失による損耗とは反対に、普通に生活していれば自然につく汚れや傷(通常消耗や経年劣化)、寿命による不具合などに対する原状回復費用は、貸主負担とされています。また、次の入居者のために行う修繕費や清掃費に関しても、原則貸主負担となります。

<通常消耗や経年劣化の例>

  • 冷蔵庫の後ろの壁が黒ずんだ(通常損耗)
  • 壁に画鋲でポスターを貼ったら小さな穴があいた(通常の使用を超えない)
  • ハウスクリーニング(次の入居者のためのもの)

3、特約がないか賃貸契約をよく確認する

住宅賃貸借契約書

一般的には、借主の故意や過失によって生じた損耗については借主負担、人が普通に生活していて生じる通常損耗分や経年劣化分は貸主負担とされるとお伝えしました。

ただ、契約の中に原状「特約」が明記されている場合があります。特に多いのが「ハウスクリーニング特約」と呼ばれる、退去時のハウスクリーニング代は借主が負担するといった内容のものです。契約内容を把握しているかどうかで、トラブルを回避できる場合もありますので、契約書をよく確認しておくことをお勧めします。

しかし、特約は基本的に「通常の範囲を超える原状回復義務を借主に負担させる」ものであることを理解しておく必要があります。また、特約を設けるのには必ず理由がありますので、詳しい負担範囲や費用額も含めてしっかり確認しておきましょう。

※費用負担額が相場を大きく超えている場合や、必要性に欠ける修繕などに対する費用負担を要求されている場合など、「借主が一方的に不利な特約」については、法律上無効となります。特約について不信な点がある場合は、国民生活センター等へ相談することをお勧めします。

4、立ち会いの際、納得いかない場合はサインをしない

傷や汚れの確認

続いてのトラブル対策は、引越当日の立ち会い確認の際の注意点です。通常、引越当日、荷物が全て運び出された後に、管理会社の担当者や大家さんと一緒に、傷や汚れ等があるかどうか確認作業を行います。

この際、しっかりと認識のすり合わせを行っておかないと、後々のトラブルに繋がります。傷や汚れがあった場合は、入居前から合ったものなのか、入居後に発生したものなのか確認して下さい。その際は、1つめの対策でお伝えした「入居時に撮影した写真」が、証拠として役立ちますので、準備しておいて下さい。

また、傷や汚れの修繕費の負担割合や負担額等、その場で正確な数字が分からない場合もありますが、確認しておくと安心です。

そして、最も重要なのが、立ち会い時、修繕費の負担等について納得できない点があった場合は、確認書へサインはしないでください。サインをしてしまうと、後々覆すことは難しくなります。

このように、引越当日の立ち会い確認は、その後の敷金返還に大きく影響しますので、可能な限り、代理人ではなく借主本人が立ち会うようにして下さい。

5、立ち会いの際、敷金診断士に立ち会ってもらう

敷金診断士

先程、引越当日の立ち会いの際の注意点をお伝えしました。本人立ち会いのもと、しっかりと確認することが重要ですが、「敷金診断士」という、原状回復費用の査定についての専門家に立ち会ってもらう方法もあります。

<敷金診断士とは>

特定非営利活動法人日本住宅性能検査協会が認定する民間資格で、不動産賃貸における敷金・保証金を巡るトラブルの解決を図る専門家です。
客観的な立場から、賃貸物件の適正な原状回復費用の査定を行い、適正な敷金・保証金の返還のサポートをしてくれます。

敷金診断士に依頼をした場合は、退去当日の立ち会い確認の際に同席をしてもらいます。その後、診断士の方に作成してもらった、診断書をもとに、管理会社や大家さんと、敷金返還について交渉することができます。

敷金診断士へ依頼する場合、査定料は発生しますが、専門家に入ってもらうことでトラブルが大幅に減らせます。また、診断士へ依頼しなかった場合に比べ、返還される敷金の額が高くなることが多いようです。

<敷金診断士への依頼>

敷金相談センター:http://www.shindanshikai.org/center/index.html

敷金バスター:http://www.shikikin.org/

まとめ

敷金返還のトラブルを防ぐ方法を5つご紹介しました。敷金返還の際に、トラブルを抱える事例は非常に多いようです。入居時の写真撮影や、契約書を確認しておくなど、事前の行動でトラブルを回避できる場合もあります。知識があればトラブルにならなくて済む場合や、損をしなくて済むといった場合もあるでしょう。上記の5つのトラブル対策に目を通して、スムーズな敷金返還を目指すことをお勧めします。